森口ゆたかさんの作品は映像インスタレーション。ドクンドクンと母の鼓動を聞きながら真っ暗の通路を進む、上下左右に閃光が走る・・・絡み合った紐がほどける映像だと気付く。不安と、なぜか安心感を体感する。通り抜けると大きな手が離れたり、つないだりしながら浮遊している。床にはその映像が映り込みとても美しい。反対の壁には斜めに投映された母に抱きつく子の手。その先の部屋には明滅する電灯によって闇の部屋からゆっくりと、今、親子が手をつなぎ合おうとする巨大な写真が現れ、そして消えていき、ゆっくりと循環を繰り返す。。。
図録にまとめるにあたって、その映像表現をどう見せるようかと逡巡。連続写真にする、多数のページで見せる、、、最終的には、映像は写真とは違うのだから、1枚の写真で観たいと思わせる画像を追求しようと、カメラマンの力に頼った。デザインは、図録の判型を大きくし、言葉による説明はしないで、全面写真の迫力のある見開きで潔い構成にした。
学芸員、カメラマン、デザイナーの信頼関係があっての仕事だと思います。作家にも喜んでもらえたのでよかったです。
©徳島県立近代美術館2011
テキスト:吉原美恵子(徳島県立近代美術館上席学芸員) 写真:米津 光 AD/D:藤本孝明
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